旅館らしさ”を壊さない家具の選び方

旅館らしさ”を壊さない家具の選び方

「せっかく手入れしてきた和の空間。洋風の家具を置いたら台無しになりそうで……」

──旅館の現場で、ガーデン家具の導入を検討する際によく聞く不安の声です。

たしかに、旅館の魅力は“空気感”そのものにあります。 古き良き日本建築の落ち着き、畳の香り、木のぬくもり。 そこに合わない家具を選んでしまうと、 たった1つのイスやテーブルが空間全体の雰囲気を壊してしまうことも。

でもご安心ください。 「旅館らしさ」を守りながら、ガーデン家具で価値を高める方法は確かに存在します。

この記事では、“旅館らしさ”を壊さないための視点や実例、選び方の工夫をご紹介します。

■ 旅館における「家具＝演出装置」だと考える

旅館の魅力は、設備以上に“もてなし”と“空気づくり”。 家具もその一部と考えると、重要なのは「高級感」よりも「調和と語り」です。

たとえば：

• 縁側に置くベンチが、和庭の眺めを遮らず、休息の気配を生む

• 客室のテラスに出た瞬間、自然素材のテーブルが“静けさ”と“余白”を伝えてくる

🪑豆知識： “映える家具”より“語る家具”を選ぶのが、旅館の価値を守る鍵です。

■ 旅館に合う屋外家具、素材と色を見極める

旅館の世界観に合うガーデン家具を選ぶ際は、まず素材と色味から考えましょう。

◇ 素材の選び方

◇ 色の選び方

• ベージュ・こげ茶・チャコールグレーなどのアースカラーが基本

• 木や石と馴染む“自然の中にある色”を意識する

• 白は避けがち（和の空間では浮きやすい）

🎨豆知識： 光が当たったときに“テカらない”素材感があるかどうかも、雰囲気に大きく影響します。

■ 実例①｜露天風呂付き客室テラスに、和テイストのソファセット

ある老舗旅館では、露天風呂のある客室テラスに 木製フレーム＋撥水ファブリックのローソファを導入。

• 座高を低くし、庭園との目線の高さを揃える

• クッションは生成りと墨色の組み合わせで、調和を強調

• 足元に敷いた天然素材のラグで床の質感も統一

結果、「外で過ごす時間が旅館の印象に残った」という声が増加。 滞在時間中の満足度アンケートでも高評価を獲得。

■ 実例②｜共有テラスに“縁側感覚”のベンチを設置

広い共有スペースを活用し、縁側に腰掛けるような感覚のロングベンチを採用。

• 背もたれなし、座面は杉材の無塗装仕上げ

• 日除けを兼ねた竹製スクリーンを併設

• 朝夕の入れ替わりで「語らいの場」として人気に

💡豆知識： “使い方の提案”を設計段階で盛り込むことで、自然にお客様が家具を活用するようになります。

■ 選び方のポイント｜旅館らしさを守る4つの視点

1. 「置く」より「溶け込む」

   • 家具が“主張”しないように。風景や素材と一体化しているか？

2. 「便利さ」より「余白」

   • テーブルが広すぎる、椅子が高すぎるなどは、空間のバランスを壊す元に。

3. 「個室」より「体験」を広げる

   • 客室の延長線ではなく、外に出たことで何が得られるか？を考える

4. 「和」の解釈を現代的にアップデート

   • “昔ながら”だけにこだわらず、シンプルで上質なミニマル和風も選択肢に

■ 最後に──家具も“おもてなし”のひとつです

旅館における家具選びは、単なる設備更新ではありません。

それは、“静けさ”や“間合い”を保ちながら、 お客様に「外の時間」も味わってもらうための演出装置でもあります。

無理に目立たせなくていい。 でも、“気づいたら座ってしまった” “そこにいるのが心地よかった” そんな家具は、まぎれもなく“旅館らしさ”を支える要素なのです。

これから家具を選ぶ際は、 「何を置くか」だけでなく「どんな空気を生むか」を基準に考えてみてください。