都市景観と調和するガーデンファニチャーのデザイン選定法

都市景観と調和するガーデンファニチャーのデザイン選定法

— 景観条例に適したデザインの屋外家具とは？ —

■「そこにあるのが自然」であることが、街にふさわしい家具の条件

2022年秋、私はある関西圏の都市再開発に関わる中で、駅前広場のパブリックスペースに設置する屋外用ガーデンファニチャーの選定と配置設計を担当しました。

このエリアは古い町並みと新しい高層ビルが混在するエリアで、観光客・ビジネス客・住民と利用層が非常に幅広く、「誰が見ても違和感のない景観」「なおかつ今っぽい洗練さ」を求められる、難易度の高い案件でした。

さらにこの市では「景観条例」が厳格に定められており、設置する家具のデザイン・色・素材には細かい制約が存在しました。

この記事では、都市景観と“溶け込む”ファニチャーを選ぶために必要な考え方と、実際の現場での学びをリアルな体験を通じてご紹介します。

■1. 景観条例って何？ガーデンファニチャーとどんな関係があるのか

多くの自治体では、街並みを守るために「景観条例」や「景観ガイドライン」が設けられています。
これは、公共空間に設置する構造物・看板・照明・色彩などが、街の統一感を損なわないようにするためのルールです。

✅ ガーデンファニチャーに関係する主な制限内容：

👉 見た目に「おしゃれ」なだけでは、公共空間では許可が下りないケースが多々あるのです。

■2. 実際のプロジェクト：関西某都市・駅前整備での家具導入の流れ

📍 プロジェクト概要

• エリア：市内最大駅の東口広場（約800㎡）

• 対象：ベンチ・テーブル・ラウンジ風休憩スペースの構成

• 景観方針：「和洋折衷の落ち着いた街並み」「緑と石材が調和する空間」

• 関連条例：色彩は景観ガイドラインで8トーン以下、原色不可

• 利用者層：通勤者／高齢者／子ども連れ／観光客

■3. 都市景観に「調和する」ガーデンファニチャーの選定基準

ここからは、実際に私が現場で使用した「選定ロジック」をご紹介します。

✅ ポイント①：色は“主張しない中間色”がベース

景観条例に沿うだけでなく、「通行人の視界に自然に入る」ためには、“視認性ではなく溶け込み”を優先する必要があります。

• ベンチ・テーブルともに【チャコールグレー】【オリーブブラウン】【セピアウッド】などを選択

• 塗装は艶消しマット加工で反射を抑える

• 植栽や建物の自然石と“色味のトーン”を揃えるのがカギ

👉 これにより、「設置物」というより“元からあった風景”のような印象に。

✅ ポイント②：素材感は「自然に近い人工素材」が理想

• ベンチ座面：人工木（WPC） → 木の風合い＋腐敗・メンテに強い

• 脚部：パウダーコート処理のアルミ → サビない・軽量・艶なし仕上げ

• テーブル：石調樹脂（大理石柄） → 高級感あり・耐候性◎

💡「木に見えるけど実は人工素材」の“フェイク・ナチュラル”が、景観×実用性の最適解でした。

✅ ポイント③：形状は「直線と曲線をバランスよく」

• ベンチ：背付き・肘付き／直線的だけど丸みのあるエッジ

• ラウンジソファ：L字型／座面を低く設計して広場の視界を遮らないように

• テーブル：六角形の集合型 → 組み合わせで用途変更可能（使い勝手＋美観）

👉 パーツがバラバラに見えず、空間全体が1つの“作品”として見えるように設計しました。

■4. 現場で得たリアルな気づきと運用面の配慮

✅ 気づき①：「景観調和＝地味」ではない

当初、「条例に従うと目立たないデザインしか無理なのか…」という声もありました。
しかし、工夫次第で「静かに魅せるデザイン」へ昇華させることは十分可能でした。

• 照明を仕込むことで夜間は“ほのかに浮かび上がる”演出

• プランターとの一体型構造 → 季節の植栽が家具の印象を柔らかくする

• QRコード案内板 → 建築や家具の背景をストーリーで伝える工夫

✅ 気づき②：条例だけでなく「運用スタッフの声」を聞くことが重要

• 担当職員の懸念：「重すぎて動かせない家具は、掃除や緊急対応がしにくい」
  → 可動式だけど“ズレにくい重量感”のバランスを調整（1脚20〜25kg程度）

• 清掃スタッフの意見：「隙間にゴミが入りにくい形にしてほしい」
  → 溝のない一体成型構造を選定、脚部も“浮かせ設計”に

👉 “現場目線”を反映させることで、長く使える設備に。

■5. 導入後の効果と市民の声

📊 導入から半年後、市が行ったモニタリング調査より：

💬 市民の声：

「家具がシンプルで、写真に撮っても街の雰囲気がいい」
「新しいのに、昔からそこにあったように感じる」
「駅前が“座って楽しめる場所”に変わった気がする」

✅ まとめ｜景観と調和する家具は、“街の空気”を壊さないことが第一

✔ ガーデンファニチャーの導入は、「機能」だけでなく「景観」とのバランスが最重要
✔ 景観条例を“制限”ではなく、“設計の出発点”として捉えると、良い空間が生まれる
✔ 「静かな主張」を持った家具こそ、街の顔になれる

📢 設計事務所・自治体・開発業者の皆さまへ
👉 [景観条例対応ガーデンファニチャーの導入事例と製品カタログはこちら（CTA）]

街に溶け込む家具は、街の価値を静かに引き上げていく。
それは、デザインだけではなく“敬意ある選定”から生まれます。🪑🏙🌿