
会場全体の印象が変わる!家具と照明のトータルコーデ術
会場全体の印象が変わる!
家具と照明のトータルコーデ術
■ 家具だけ、照明だけでは「空間」はつくれません
イベント会場やガーデンパーティー、展示ブースやショールームなど、
訪れた人が「なんだか心地いい」と感じる空間には、必ず理由があります。
その理由の一つが、「家具と照明の連携」です。
どちらか一方だけでは印象は成立しません。
逆に、家具と照明がうまく噛み合うと、それだけで空間全体の雰囲気ががらりと変わります。
家具の存在感を活かすのは光であり、
光の演出を活かすのは家具の質感や配置なのです。
■ 照明の設置で“印象が沈んでしまった”現場
ある屋外イベントでのことです。
人工ラタンの上質なガーデンソファを複数配置し、昼間はとても映える空間ができていました。
しかし、夕方からの来場者に向けて照明を足したところ、会場の雰囲気が重たくなってしまいました。
原因は、照明の配置と色温度が家具の質感をつぶしていたことです。
ソファの背面に強い光が当たってしまい、素材の編み目や陰影が消えていたのです。
そこで、やわらかい光を下からあてるフロアライトに変え、さらにテーブルの周りに小型のランタン照明を加えました。
その瞬間、家具の輪郭が浮かび上がり、空間に奥行きと温もりが戻ってきたのです。
照明ひとつで、印象はここまで変わる。
この経験から、私たちは家具と照明をセットで考える重要性を強く意識するようになりました。
■ 家具と照明、どちらを先に決めるかより大切なこと
よくあるご質問に「家具が先ですか?照明が先ですか?」というものがあります。
正直に言えば、どちらが先でも構いません。
もっとも大切なのは、「この2つを分けて考えないこと」です。
たとえば、明るめの木製ガーデンチェアを選ぶなら、
その温かさを活かすために、電球色のあたたかい照明を合わせるべきです。
反対に、ダークカラーのソファを使うなら、
周囲の光を絞りつつ、家具の背後や足元に間接照明を入れてあげることで輪郭がきれいに浮かび上がります。
ガラス素材のテーブルなら、下からの照明が天板を透過して、美しい光の反射を生みます。
家具をどのように見せたいか。
その意図に合わせて照明を設計することが、空間づくりでは非常に重要です。
■ 光の役割は「照らす」だけではありません
家具と照明をセットで考えるとき、私たちは「光は家具を演出する存在」と捉えます。
明るさを確保するだけでなく、雰囲気をつくり、人の感情に作用する光。
その使い方を少し変えるだけで、空間全体の印象がガラリと変わるのです。
◉ 明暗のバランスで、視線を誘導する
空間全体が均一に明るいと、かえって印象に残りにくくなります。
一方で、光と影のコントラストがある場所には、自然と視線が集まります。
たとえば、ソファの背面に間接照明を仕込み、前方は少し落とし気味にすると、
座面のテクスチャや形状が美しく浮かび上がります。
家具の存在感が引き立つことで、全体の印象にも深みが出てきます。
◉ 座ったときの「目線」に配慮する
立って見たときには問題ない照明も、座るとまぶしさを感じることがあります。
そのため、座っている目線の高さでどう見えるかを意識した照明設計が大切です。
テーブルの上に小さなキャンドル型ライトを置くだけでも、座った人が落ち着いて過ごせる環境になります。
また、照明の高さや位置によって、目に入る光の強さをコントロールすることも重要なポイントです。
◉ 照明そのものも「インテリア」として見せる
最近では、照明そのものが家具の一部として見られるケースも増えてきました。
コードレスのランタン型照明や、ファブリックシェードを使ったフロアライトなどは、
光を届ける以上に「空間の主役」としての役割も果たします。
家具に合った照明器具を選ぶこと。
それは、素材や形状だけでなく、照明自体の存在感を空間演出に活かすという視点でもあります。
■ 実際の現場で効果を発揮した例
東京都内の商業ビル屋上で開催された夏季限定イベントでは、
最初は家具のみの設営で、昼間は人が集まりやすかったのですが、夜間はなかなか人が定着しませんでした。
そこで、足元を照らす照明を追加し、ガーデンソファ周辺にはポータブルタイプのライトを配置しました。
さらに、クッションの色を中間トーンに変更して、光を優しく反射させるようにしました。
すると、SNS上では「夜のラウンジが素敵」「写真映えする」と投稿が増え、
予約数も想定の1.6倍を記録したそうです。
照明の力で、家具の魅力が引き立ち、空間全体の価値が上がった好例でした。
■ 設計者こそが「家具×照明」のつなぎ手
家具は家具屋、照明は照明業者。
それぞれ専門が分かれている現場では、この2つを別々に考えがちです。
しかし、本当に印象に残る空間をつくるには、設計者やディレクターが**“全体のバランスを読む役割”**を果たさなければいけません。
家具を決めたら、その素材や形状がどんな光を受けるか。
照明を決めたら、それが空間のどこに配置される家具とどう組み合わさるか。
そういった思考の“行ったり来たり”が、完成度を大きく引き上げてくれます。
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